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目に見えない環境汚染時代を生き抜くために42

 ◇観測史上最も暑い夏
 ◇木彫刻の故郷、富山県南砺市を訪ねる


 世界的な異常気象が続く中、7月は気温と海水温の世界の平均値において1880年の観測史上最高温度が記録されました。日本では通常春に第1号が 発生する台風が7月まで発生せず、太平洋熱帯域の海面水温が平年よりも高くなるエルニーニョ現象の終息に伴う現象とみなされ台風発生件数も少なくなると予 想されていました。しかしながら、8月に発生したトリプル台風(台風9号、10号、11号)は互いに干渉しながら次々と日本列島を襲いました。

 8月21日に台風11号が北海道を直撃した後、台風9号が関東に直接上陸。北海道には台風7号が9年ぶりに既に上陸しており前例のない事態となっていま した。その間、台風10号は進路を西にとり、そのまま進むかと思いきやブーメランのように舞い戻ってきたのです。新たな気象観測衛星「ひまわり8号」から の画像にも日本に接近している3つの台風の姿が捉えられています(8月21日午後12時の画像)。

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 過去に例のないルートで東北太平洋岸に上陸した台風10号は岩手県や北海道に甚大な被害をもたらしました。通常台風は日本に近づくと北東方向に進 路をとりますが、大陸から進んできた寒冷渦に巻き込まれて北西に進んだのです。1951年の観測以来、東北太平洋岸に上陸した台風はゼロ。防災対策は万全 だったのでしょうか。日本の河川は世界的に見ても短く急流であることが大きな特徴となっています。支流などの小河川であっても侮らず豪雨が予測されている ときには率先して避難しましょう。

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 ◇木彫刻の故郷、富山県南砺市を訪ねる 

 手前味噌な話題となり恐縮ですが、筆者が係るNPO団体が2015年度の地球市民賞(国際交流基金)を受賞し、今年で受賞団体が100団体となる ことを記念したワークショップに参加する機会を頂きました。国内における地域に根差した国際文化交流事業を実践している全国各地の受賞団体の中から、2件 を輩出している富山県南砺市の活動を視察して参りましたので、今回はその様子をお伝えしたいと思います。

 受賞団体の一つは「いなみ国際木彫刻キャンプ実行委員会」。南砺市において、世界各国から招かれた彫刻家が野外で作品を制作する日本最大規模の木 彫刻イベントを1991年以来4年ごとに開催しています。これまで7回開催し、42か国84名の海外作家を招待しているそうです。木彫りを通して世界をつ なぐ活動は地元のボランティアによって支えられ、作品は公園などに野外常設展示されているとのこと。

 富山県を訪問したのは人生で3回目ですが、北陸新幹線の開通でメディアの注目を集めている金沢市(石川県)の陰に隠れているような印象を持ってい るのは筆者だけでしょうか。周囲に尋ねてみても「行ったことがない」という答えばかり。南砺市には、北陸新幹線の新駅、新高岡駅から城端線という大部分が 単線のローカル線に乗り継いで参りましたが、この先に何十年も国際交流をしている団体が幾つも本当に存在するのだろうか?と、延々と続く田園風景を眺めな がら考えていました。

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 そもそも富山県には著名企業はほとんどなく、ニッチな産業が多いとのこと。富山名物と聞かれれば、富山の薬売りやますの寿司、ホタルイカくらいま では知っていても、なかなか後が続きません。富山県民の皆さまには失礼ながら、もう少しPRをきちんとなさって、魅力を伝えられてはと思うものです。フ リーアナウンサーの福澤朗氏は北陸新幹線開通時に富山駅でレポートされたそうですが、大手マスコミのほとんどは金沢駅に集結してしまい残念だったとのこ と。

 海外からのゲストのおみやげに時々利用している「能作」の錫製品のお話をすると、福澤氏も大好きで使っていらっしゃるとのこと。高岡市が銅器や漆 器などの伝統工芸のまちであることは同製品を通じてかろうじて知っていました。能作は仏具金物メーカーとして大正時代に創業しましたが、伝統の技を守りつ つ、新分野の開拓に取り組んでいます。錫の酒器や食器類はヒット商品となりましたが、こうした創意工夫が伝統工芸の世界には欠かせなくなっています。

 南砺市井波が木彫の古い歴史を有することを恥ずかしながら訪問するまで知りませんでした。井波に到着すると、小京都のような風情漂う石畳の通りに 彫刻工房が立ち並び、その先には北陸随一の大伽藍、歴史的木造建築物の井波別院「瑞泉寺」が聳え建っておりました。1390年に本願寺五代、綽如上人が創 建した瑞泉寺は北陸の浄土真宗信仰の中心として信者を集め、越中一向一揆の拠点にもなった古刹です。

 驚いたのはそのスケール。日本で4番目に大きな現在の本堂は1885年に再建されたもの。幾度となく大火に見舞われて再建を繰り返してきた本堂 は、18世紀の再建にあたり、京都本願寺の御用彫刻師の前川三四郎が本堂や山門の彫刻で腕を振るい、地元井波の宮大工たちが彫刻の技を学んだのが井波彫刻 の始まりとされています。明治の大火を免れた山門においても見事な彫刻を観賞することができます。

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 木彫キャンプに参加された井波美術協会の代表を務める谷口信夫氏は、日本の木彫の故郷である瑞泉寺の境内に世界各国から招聘した作家と共にテント を張り、一週間にわたって制作を行うことでさまざまな違いを超えた友情が育まれると話してくれました。また、コンペではなく、制作過程を地域の人々にご覧 頂くキャンプ形式をとることで地元のボランティアの人びとも異なる感性や技に触れ、地元の伝統文化に誇りを持つことができるようになると言います。

 その後、隣接する大門川河川公園と井波彫刻総合会館を視察しましたが、点在する異国情緒溢れる木彫作品が起伏ある公園の情景に溶け込んでいる様子 はシュールそのもの。キャンプで使われる原木は、各国の彫刻家の希望を取り入れながら、九州から欅を中心に取り寄せているそうです。近年は地上から彫刻を 浮かせた展示方法をとっていますが、以前は木彫ゆえに朽ち果ててしまった作品もあるとのこと。

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 海外では石彫を数多く目にしましたが、木彫でこれだけバラエティに富んだ作品が見られる場所は他に例をみません。井波彫刻総合会館では井波彫刻の 歴史を勉強させて頂きました。中でも彫刻欄間の美しさには目を見張りました。現在は和室そのものが少なくなってきていることから需要は大きく減少したそう ですが、こうした伝統を受け継いでいってほしいものです。

 工房では若いお弟子さんが制作に没頭する姿も目にしましたが、全体としての数は目減りしているそうです。見事な木彫を施した表札など、現代建築の 中でも活用できる素材はありますので、ありきたりの表札に飽きがきましたら、井波彫刻の粋な表札を提案されてはいかがでしょうか。井波彫刻総合会館に飾っ てある作品には全て値段が付されておりましたが、彫刻欄間は数百万円、表札は数万円の価格帯でした。

 その他、若手の作家が制作したという井波彫刻ギターや恐竜彫刻も素晴らしい作品でした。長年にわたり神社仏閣の造営に携わった技をかわれ全国から 声がかかるそうですが、中でも東本願寺や築地本願寺、日光東照宮の彫刻を手がけてこられたことは名実ともに日本一の証左と言えましょう。明治期の和風建築 には井波欄間がよく見受けられるそうですが、現代建築に調和する作品を探すのも一興かと。

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 南砺市は平成16年に4町4村が合併して生まれましたが、中には世界遺産の五箇山の合掌造りの集落も含まれ、「結(合力)」と呼ばれる集落単位の 相互扶助関係が伝統的に強い地域でもあります。今回は元井波町の彫刻についてご紹介しましたが、お隣の元福野町においては、1991年からワールドミュー ジック・フェスティバル、「スキヤキ・ミーツ・ザ・ワールド」が毎年開催されており、併せて視察させて頂きました。ワールド・ミュージックの分野では世界 的に有名なイベントでアフリカや南米の著名アーティストがステージやワークショップで市民と交流する姿は圧巻でした。

 南砺市利賀村には1976年に拠点を東京から移した、SCOTという舞台作品の創造上演、世界演劇祭の運営など、国際的な活動を展開している世界 の演劇人の聖地も存在しています。これだけの文化芸術を擁している南砺市のことを何故今まで知らなかったのだろう?と狐につままれたような気持ちにもなり ました。しかしながら、南砺市長をはじめ、地元の方々のお話をお伺いするにつけ、大都市には大して目を向けておらず、南砺市民が伝統的な結のチカラを受け 継ぎ、文化芸術活動をまちぐるみの行事として継続していくことに重きを置いていることを知るに至りました。

 環境マテリアル推進機構の会員ネットワークにも通じる結束力を実感する視察となりました。結論としては、ニッチであることは大きな特長でもあったという ことです。ニッチの分野で深堀りしていく強みはブレが少ないことでしょうか。富山県は三世帯同居世帯が多く、幸福度が高い県とも言われています。2019 年のいなみ国際木彫刻キャンプが今から楽しみです。

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