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目に見えない環境汚染時代を生き抜くためにN

  爽やかな新緑の季節を満喫していたところ早くも猛暑日が各地で観測されるようになりました。6月3日には北海道にて道内観測史上最高の37.8度 を記録。今年はエルニーニョ現象の発生が予測されているので、7月以降は例年よりも平均気温が低くなる可能性がありますが、今月は『暑さ指数』をチェック してから外出するようにしましょう。オゾン層破壊が進み、人体にも有害な紫外線Bが地上に到達するようになってきていることも懸念材料です。外出時には日 焼け止めクリームで皮膚を保護しサングラスをかけて眼の保護をしましょう。

 環境省でも熱中症予防情報メールの無料サービスを推奨しておりますので是非ご利用下さい。http://www.wbgt.env.go.jp/mail_service.php

 暑さ指数(WBGT)は、単なる気温とは異なり、湿度や輻射熱を勘案したもので、熱中症になりやすい状態を示した指標となっています。

 熱ストレスは太陽から人体に直接降り注ぐ日射の影響だけでは測れません。ヒートアイランド現象と呼ばれるように、都市部においては比熱容量の大きいアスファルトやコンクリートの路面や壁面からの熱の影響が全体の6割と大きく左右します。

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 一泊研修で学んだ皆さまは既にご承知と思いますが、太陽からの放射は地球に到達すると、赤外線領域の電磁波となって移動します。日射が同じでも、赤外放射の放射熱量の違いが同じエリアでも大きく異なってきます。

 国土交通省管轄の国土技術政策総合研究所で低炭素建築技術、ヒートアイランド対策の研究をされている足永靖信博士が開発した熱環境評価のためのシミュレーションツールを用いた受熱量の違いについてみてみましょう。

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 真夏の正午(気温33度)に街路で歩行者が建物や道路から受ける熱量(放射線量)は、試算の結果、幅の広い東西道路の北側歩道では900W/m2に なるとのこと。東から西へと移動する太陽からの長時間日射を受けることによって、路面や壁面が高温化して歩行者への暑熱ストレスを高めていることが分かり ます。同熱量は、およそ6畳の部屋に1000Wの電気ストーブを約10台使用したときに人が受ける熱量に相当するそうです。

 暑い日は陽当りの良い東西通路の北側を歩くことは避け、街路樹のある通りを選んで受熱量を抑えましょう。

尚、同博士が所属する建築研究部、環境設備基準研究室では、建築物の設備システムや躯体構造の工夫、特殊建材の導入など、各種要素技術を総合して建築物 の電力消費の低減やピークシフトの効果を検証して需要側のピーク対策を促進するため、電力依存度低減に資する建築物の評価・設計技術の開発を来年度まで実 施されています。

 さて、前置きが長くなりましたが、今回も、前回に続きカナダの名門、マギル大学の建築学の教授、アヴィ・フリードマン博士が昨年出版した "Innovative Houses" Concepts for Sustainable Living(『革新的な住宅』持続可能な生活のコンセプト・Laurence King Publishing Ltd.刊)の内容をご紹介したいと思います。著作権上、転載はお控えくださいませ。

 第二部は「デザイン及び製造方法」についてとりあげています。2008年のリーマンショックを発端とする米国のバブル崩壊に伴う世界的な金融危機 以降、安定した雇用や収入が見込めなくなり、人口密度の高い都市部において初めて住宅を購買する消費者を取り巻く環境は悪化していきました。

 大きな邸宅を求めてきた米国における消費傾向はリーマン破綻の原因となったサブプライム住宅ローン危機以降大きく変化し、小規模でエネルギー効率 の良い手頃な価格帯の住宅への需要が高まりました。第一部でとりあげた人口動態且つ社会的な変化や非伝統的な世帯の出現による影響も小さな家の市場シェア を押し上げることになりましたが、第二部では、こうしたニーズに応えるデザイン・コンセプトや製造方法に焦点をあてています。前回の1〜4章に続き、今回 は5章と6章をご紹介しましょう。

5. 順応性のある家
 

 独身世帯や片親世帯、高齢者世帯の増加に伴い、機能性や快適さを犠牲にしない新たな建築システムや、空間に対するさまざまなニーズに対応できる順応性の あるユニットが登場し、引越や家の建て直しをするよりも増改築が好まれるようになり、それに伴うデザイン・コンセプトや技術が導入されるようになりまし た。

 順応性のある家づくりをするには、世帯のニーズに応じてレイアウトをデザインすることが重要です。フレキシブルなレイアウトを実現する一つの方法 は、屋内の耐力サポートを必要としない構造をデザインすることです。狭い家の外壁の間を床用根太で覆うことや広範にI型の木製根太を使うことで、耐荷重壁 を使う必要もなくなりインテリアの順応性を広げることができます。水回りは移動が大変なのでまとめておきましょう。また、自由に使える小規模な多目的ス ペースを設けることで順応性を高めることができます。

 効果的な循環を意識した間取りについても考慮すべきでしょう。廊下を設けず、廊下そのものが生活空間や多目的スペースとして使えるようにデザイン すると良いでしょう。また、可動性のキッチンやキャビネット、モジュール式の家具も順応性を高めます。家具は間仕切りとしても活用できるでしょう。

 配管工事や換気、暖房システムなどのシステムはメンテナンスや修理がしやすいように垂直型のサービス・シャフトにまとめます。また、電線やケーブル、電源コンセントをフィーダー・チューブ型にすることも順応性を高めることになるでしょう。

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 これは、オーストラリアの建築家がデザインした倉庫を改築した住居の屋上テラス部分の写真です。倉庫は採光も乏しく空間もプライバシーもありませ んでした。同建築家は、屋根を外し、張出し屋根で覆われたテラスを設置しました。85平米もあるテラスが、都市部で損なわれている家族団欒用のアウトドア のプライベート空間として機能しています。また、天窓から降り注ぐ自然光が吹き抜け空間を繋ぐ役目を果たしています。

6. 成長する家
 

 拡張可能な「成長する家」は人生のステージ毎に屋内外の居住空間を増やすためにデザインされたものです。米国では引越に伴う住宅の売買が盛んですが、近年は、引越するよりも人間関係のあるコミュニティーに住み続けたいというニーズが聞かれるようになりました。

 筆者の叔母は長年米国に在住しており、幼少の頃からサンフランシスコ郊外にある風光明媚な港町モントレーを訪問することが楽しみでなりませんでし た。ところが、突然、叔母の面倒をみていた従姉妹夫婦が長年住み慣れた住宅を売却して娘の嫁いだオレゴン州に引越してしまったのです。こうしたことは米国 ではよくあることですが、近年は特に若い人々から同じ場所に居続けるために居住空間の増改築のしやすい家が求められるようになりました。

 日本では長引く不況で新築マンションよりも中古マンションのリフォーム、リノベーション物件に対する人気が都心部の若い世代を中心に高まっていま すが、今後も、こうした傾向は長期的に続くと予測されています。DIYブームは欧米から日本に伝わりましたが、米国では増改築ニーズの拡大に伴いさらなる 広がりをみせています。

 さて、「成長する家」づくりの主な手法は「アドオン」又は「アドイン」と呼ばれるもので、アドオンのデザインは追加することによる拡張を志向する 人向きですが、最初が肝心であり将来の増改築を見据えた設計が欠かせません。土地の余裕があれば平屋の建増しも簡単ですが、限られている場合は階数を増や したり<写真A>、ガレージの上に二階を増築しやすくするなどの工夫が必要です。

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 以前ご紹介させて頂いたパレスチナの建築では、子どもたちが結婚後に実家に建て増しで居住することが多いため、平屋の屋上部分に建増し用の鉄骨や 枠組みが予め飛び出ている家を数多く目にしました。景観的には?ですが、いざ、2階や3階部分の増築が始まると村の祝賀ムードが高まります。

 「成長する家」のコンセプトを導入すると、増築部分を別の場所で製造してから輸送する手法もとれるので増改築中の煩わしさがなくなり利便性を高められます。さらに、最初から大きな家を建てるよりも省エネ、省コストです。

 アドインのデザインは、既存の家の内部の構造を変えることで居住空間を増すものです。屋根裏部屋をつくったり、既存の家を二世帯住宅に分けたり、ガレージを居住空間に変えたり、地下室を後で完成させるなどの事例が挙げられます。

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 <写真B>は、スウェーデンの建築家の設計によるプレハブ手法を用いたモジュール・ハウスです。モジュールを居住者の好みに合わせてレイアウトし ています。大きなモジュールに居住し、10平米の小さなモジュールはゲスト用のベッドルームとして活用しています。モジュールは工場で組み立てられ、エク ステリアの木製デッキの上に設置されています。モジュール間には可動式のキャンバス屋根が設けられています。日本の過疎化が進む中山間地にこのような洒落 たモジュール・ハウスを建てて自給自足の生活を始めたら人生もコミュニティーも一変しそうですね。

 ここでもう一つアドインの事例を挙げてみたいと思います。昨年11月に日本人アーチストの展示会とお茶会を実施した際に会場としてお借りしたニューヨークのマンハッタン在住の友人が居住しているペントハウスのことです。

 筆者はアートを通じた平和の文化の啓発活動を10年前に国連本部(ニューヨーク)で国連NGOと共に立上げ日本人アーチストと共に活動しておりますが、アートの力はときに大きな力となって地球上に存在するさまざまな問題に立ち向かう希望や勇気を与えてくれます。

 同プロジェクトで足繁くニューヨークに通っていた時期がありましたが、足かせになるのが高額なホテル代でした。最初の頃はホテルやマンスリーマンション などに宿泊していましたが、1泊200ドルは下らないため、最終的に友人のペントハウスの一室をお借りするようになりました。

 今となっては住居の一室を旅行者に貸し出すシステムは世界中で大いに流行っておりますが、当時はサブレット(又貸し)情報に地域誌やネットでアク セスしてマンハッタン中のお宅に宿泊しながら各エリアで異なる街並みや人種のるつぼ(近年は民族のサラダボウルという表現が使われるようです)を満喫した ものです。

 友人のペントハウスはマンハッタンのチェルシーと呼ばれるエリアの西側にあり、購入した80年代当時はマンハッタンで最も治安が悪い地域で夜も出 歩けなかったそうです。同時期に連邦検事としてマフィアの掃討作戦を指揮したジュリアーニ氏が94年に市長に就任するとニューヨークの治安は劇的に改善 し、続くブルームバーグ市長が環境問題や地域開発に力をいれた結果、同地域はニューヨークで最も不動産価格が高く観光客で溢れるホットなエリアに様変わり したのです。

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 ジュリアーニ元市長のアシスタントを務めていたことのある友人の話によれば、当時のイタリア系マフィアの撲滅はイタリア系のジュリアーニ市長でな ければ成し得なかったとか。マフィアは魚市場やイエロー・キャブで有名なタクシー業界などを牛耳っており誰も怖くて手をつけられなかったそうです。有名な 『割れ窓理論』を応用して全米で最も多く犯罪率を削減させただけでなく、2001年の同時多発テロ後にリーダーシップを発揮して一躍脚光を浴びた元市長の 業績は今日のニューヨークを見れば一目瞭然です。

 話がそれましたが、友人のペントハウスは築100年をこえるCOOPと呼ばれるアパートメントの5階(最上階)にあります。COOPとは各個人 オーナーがビルの株式を保有して共同運営していくタイプのもので、築年数の古い物件がニューヨークには数多く存在します。アート業界にいる友人はCOOP を購入してからアドイン式の改築をして空間を仕切り直し、一室をサブレットで貸し出していたのです。友人の話によれば、ペントハウスのオーナーは屋上にも 増築できる権利を有しており売却時にも付加価値となるとのこと。

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 同アパートメントの周囲は数件を残してデベロッパーに買収されてしまったそうで、どのタイミングで手放すかどうかを検討しているとのこと。すぐ向 かいのブロックには昨年グーグル本社も引越してくるなど、不動産価格高騰に拍車をかけているそうですが、いずれにしても今のままではエレベーターの設置も できないので売却後は建て直すことになるそうです。歴史が刻まれている重厚な佇まいのアパートメントが取り壊されることは大変残念ですが、資本主義の波に のまれて大都市から次々と姿を消していく流れに歯止めをかけられないものでしょうか。

 余談となりますが、同友人宅で実施した日本人アーチストの特別展示が6月4日から6月11日までNYのオークションハウス、フィリップスにてス タートしました。高蒔絵や彫金、組紐など日本の伝統的な技巧が結集した作品を通じて、日本の伝統美、匠の技を伝えることができればと思っています。昨年ペ ントハウスで実施しましたが、日本の和の思想を伝えるべく次回はお茶会も企画したいと思います。

 次回も『革新的な住宅』よりご紹介したいと思います。

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